工作機械の自動化の選択肢~ワーク交換とパレット交換~
◎生産するワークの種類と生産量からみる自動化
マシニングセンターなどの工作機械の「自動化」と言っても様々な種類や方法があります。自動化と聞いてすぐに思い浮かぶのは多関節ロボットを使ったワーク交換でしょうか?インターネットで「工作機械 ワーク交換」で調べると約600万件以上もヒットします。加工するワークの種類の多さや生産量にあわせてどういった自動化がいいのか、また、工作機械と言っても幅広く存在し例えばマシニングセンターと旋盤では自動化の選択肢が変わってくる場合があります。今回はマシニングセンターにおける一般的な自動化の選択肢を紹介したいと思います。
少品種(類似が多い)・量産の自動化の候補
同じワークを量産する場合やある程度種類が絞られている(類似のワークが多い)場合はワークを直接ハンドで掴む方法が選択肢の候補として挙がります。
①ガントリーローダー
同じ(類似)ワークの量産に向いており、単体機に1台のローダーを設置する場合と複数の機械に対して1台のローダーを設置する場合があります。複数の機械に対して1台のローダーを設置する場合は工程間搬送が主となります。また、工作機械の上部を走行するため工場内の高さがある程度必要になってきます。
②多関節ロボットによるワーク交換
ロボットに取り付けられたハンドでワークを直接掴む方法です。ワークサイズや重さにあわせてハンド(爪を含む)を製作します。ワーク重量が重たい場合は可搬質量の大きなロボットが必要になるため高額になりやすいです。また、類似形状のワークが多い場合にはハンドの共通化が検討ができます。共通化ができない場合はハンドチェンジャーや爪の段取り替えで対応することになります。
多品種・少量(小ロット)の自動化の候補
多品種小ロットの場合はワークを直接掴む方法が難しいケースが多いためワークを取り付けたパレットごと交換する方法を検討します。
①APC装置(パレットチェンジャー装置)
大型ワークや重量のあるワークでも対応可能でほとんどの工作機械で導入が可能です。一般的な横型マシニングセンターにはAPC装置が標準的に搭載されています。パレット面数はパレットサイズや工作機械の種類によって異なりますが2面~20面程度まで存在します。
②多関節ロボットによるパレット交換システム
比較的小さく軽いワークで導入されるケースが多いです。しかし、ワークサイズや重量が重たくなると可搬質量の大きな多関節ロボットが必要になるため高額になりやすいです。最近ではクランプ機構にホルダー(HSKやBTのショートテーパー)を用いているタイプもあり選択肢が豊富です。
※多品種の場合は基本的にワークハンドリング(ハンドで直接ワークを掴む方法)は不向きです。
【不向きな理由】
→その都度ワークにあわせてハンドや自動治具を製作する時間と費用がかかる
→仮にその都度、製作したとしてもハンドの置き場所と管理が大変になる
→ハンドや治具の交換により多関節ロボットであればティーチング、ガントリーローダーの場合であれば各軸の座標設定など手間がかかる
◎ワークサイズ・重量・形状から考える選択肢
ワークサイズや重さ、形状によっても自動化の候補が複数あります。ここではワークサイズや形状のみに絞って紹介しますが、実際には生産するワークの種類や生産量とあわせて検討する必要があります。例えば、生産するワークが小さく軽いものであってもワーク形状が複雑で段取り作業を人が行う必要がある場合には自動治具化が難しいためワークを直接掴む方法が困難となります。
ワークが小さく軽いあるいは単純形状の場合の自動化の候補
ワークが小さく、軽いあるいは単純形状の場合はいずれの自動化も候補となります。あとは工作機械の種類、ワークの種類の多さ、生産量など今回ご紹介した内容などと照らしあわせながらどういった方法にするか決定していきます。
①多関節ロボットによるパレット交換もしくはワーク交換
②ガントリーローダー・ワークローダー
③APC装置(パレットチェンジャー装置)
ワークが大きい(重い)あるいは複雑形状の場合の自動化の選択肢
①APC装置(パレットチェンジャー)
ワークが複雑形状で段取り作業を作業者が行う場合やロボットの可搬質量以上のワークの自動化をする場合はAPC装置(パレットチェンジャー装置)を選択することになります。ワーク重量がロボットの可搬質量以内であっても、可搬質量が大きくなるにつれてロボット高額になるため対象ワークの種類の多さや生産量を考慮してAPC装置とロボットどちらにするか選択する必要があります。
◎まとめ
今回は「生産するワークの種類の多さ」「生産量」「ワークサイズ・重量」「ワーク形状」に的を当てて自動化の候補を紹介しましたが、実際には様々な条件を基にどういった方法がいいか検討していく必要があります。
例えば今回紹介した内容で考えてみると
【ワークが小さくて軽い+多品種少量→多関節ロボットによるパレット交換】
といった感じです。
また、ここでは紹介していませんが工場内のスペースなども条件のひとつとなってくる場合があります。自動化をご検討されている方は一度お問合せページからご相談下さい。