ATC装置(自動工具交換装置)とは?Vol.3
Tool to Tool(ツール・トゥ・ツール)とは? Cut to Cut(カット・トゥ・カット)とは?
Tool to Tool (ツール・トゥ・ツール)は通称T-T(ティーティー)、 Cut to Cut (カット・トゥ・カット)は通称C-C(シーシー)と言います。(JISではC-CをCTCと標記しています。)これらはATC装置の工具交換時間を表す指標です。 T-T(ティーティー)とは、そのまま訳すと工具から工具という意味で、マガジンと本機主軸が工具交換直前の待機状態からスタートし、工具交換を完了して元の待機状態に戻るまでの時間です。T-Tのほとんどの時間をチェンジャー動作 (ATCアームの動作を含む)が占めます。一方、C-C(シーシー)はある基準位置から、工具交換位置へ移動し工具交換完了後に基準位置へ戻るまでの時間です。マシニングセンタの場合は立型、横型でそれぞれ基準位置も定義されています。工作機械の仕様比較をする場合は明記されている工具交換時間がT-TかC-Cのどちらなのか確認する必要があります。
JISで定義される工具交換時間
[JIS B 6336-9 : 2002]
工具交換換時間 (cut-to-cut tool change time),CTC 加工領域内の基準位置PRから交換すべき工具を移動させ始めたときから、交換した次の工具をその基準位置PRに位置決めし終わるまでにかかる時間。
<備考>
CTCは,自動運転下で工具交換に必要な動作をすべて考慮しているので、単純に工具だけを交換する時間よりも、自動工具交換動作時間の評価には適している。
ATCアームとは?
ATCアームとは工具交換において工具を直接掴む部分です。ATCアームには大きく分けてフォーク式、スイング式の2通りがあり、形状にも一般的な180°の他に90°(L字型)や十(じゅう)字型があります。また、工具姿勢が水平・垂直、もしくは両機能を持つものもあります。駆動方式では油圧による駆動、電動カムによる駆動、空圧(エア)式の駆動があります。ATCアームにおいては、工具を把握しているときに工具落下を防ぐためアームの爪が開かないよう安全機構をもたせています。その他に注意すべきポイントとしては、工具規格によってアームの形状を適切に選定すること、工具質量・モーメントなどによって把握力を適正化することなどが挙げられます。アーム旋回スピードは工具交換時間と密接に関わる重要な要素になります。工具質量が大きいと旋回スピードに制限が生じる一方で、工具交換時間の短縮が求められるため、最適な旋回機構の設計が必要になります。また、工具質量にあわせて旋回スピードを変化させる設定をする場合もあります。
[例]最大工具質量が25kg場合
15kg以下の工具ではM06(通常旋回)
15kg以上の工具ではM16(遅旋回)
を使用するように決められている工作機械もあります。
ATCアームがマガジン及び工作機械本体の主軸と芯出しができているか定期的に確認する必要があります。芯出しの確認を怠ると工具交換時にツール落下などのトラブルの原因となります。芯がずれる原因は様々ですが例えばチェーンタイプマガジンの場合、経年によるチェーンの伸びが考えられます。頻繁に行う必要はありませんがチェーンのテンション確認・調整と芯出し確認をセットで行うことで予防保全として十分な効果があります。
ATCアームをもっと知りたい方は、ATCアームの構造(図解付)も是非ご覧ください。