ATC装置(自動工具交換装置)とは?Vol.5
番地固定方式とメモリーランダム方式とは?
固定番地方式及びメモリーランダム方式はそれぞれ工具をマガジン内に収納する方式です。固定番地式は決められた工具を決められた位置(番地)に収納するため、これはオペレーターにとっても工具の管理が容易です。一方でメモリーランダム方式は立形マシニングセンタなどで多く採用されているポット転倒タイプのマガジンに多く見られます。メモリーランダムはアームの工具交換動作1回でマガジン工具と主軸工具が交換できるのが特徴です。しかし、この工具交換方式だとツールポットと工具の位置関係は一定ではありません。オペレーターが混乱しないように制御などで工夫することが大切です。
工具モーメントとは?どうして制限がある?
工具の仕様は最大質量と最大長さで表されることが一般的です。しかしながら同じ質量と長さの工具でもその重心がどこにあるかで、ATCのマガジンポット或いはATCアームにかかる負荷は違ってきます。その負荷は「工具質量×重心位置」で算出し、これを「工具モーメント」と表現しています。この「工具モーメント」に制限を設け、マガジンポット及びチェンジアームの把持力を設計しているのです。
プルスタッド付き工具のマガジンポット内での保持方法は?
プルスタッド付き工具の保持方式は、ホルダ後部に設けた中心軸に直交する穴に鋼球とバネを入れ、プルスタッド中間の円錐面に鋼球を押し当てて保持しています。工具の最大質量及びモーメント(質量× 重心距離)により保持力を設定しています。工具を縦向き(自重落下方向)に保持する場合、また工具を確実に保持する場合は「バネ+鋼球」に加え「ロックピン」を設けます。このホルダは「ロックピン」を解除しないと工具が抜けない構造になっています。ロックピンの解除方法はエアーシリンダーなどを使用します。
HSKのマガジンポット内での保持方法は?
工具内面テーパ部に内側から鋼球を押し付けるタイプか機械主軸と同じで工具の内径を内張りコレットで保持するタイプがあります。工具規格によってはその部分の詳細寸法は公表していない場合もあります。工具モーメントが大きい場合は、マガジンでの収納方法、工具の搬送時の方法及び姿勢がATC装置のタイプ選定のポイントになります。プルスタッドの無い工具例としてHSKの他にKMやキャプトなどが上げられます。